天使のアリア––翼の記憶––

「準備はいいな、月子。もう時間だ。」

「はい。」


返事をしながらパパっと忘れ物がないか確認する。

最終的な打ち合わせって言ってたから、何がなくても大丈夫なはず。


すると楽屋のドアが開いて、

「星宮さーん、華原さーん。そろそろ打ち合わせしようと思いますので、会議室の方に移動をお願いしますー。…っ!」

スタッフさんが呼びに来たようだ。


おまけに先輩の顔を見て顔を赤く染めている。

あちゃー、あんたさん先輩に惚れちゃいましたな。あーあ、お気の毒に。先輩って恋愛にも全く興味ないから、一方的な片想いで終わることが目に見えているんだよ。報われない恋ってやつですな。あぁ、本当に可哀想に。

恋に落ちたスタッフさんに同情していると、そんなことなど露も知らない先輩の声が耳に届いた。


「ありがとう。今行く。」

これだ。先輩はどんな時もどこに行っても誰に対してもこの口調なんだ。色んな意味で尊敬する。

おまけに、先輩が笑顔でありがとう、なんて言うものだから、スタッフさん顔を茹蛸の如く真っ赤にして口を押えてしまったじゃないですか!この人、もうちょっとで倒れるよ!救急車呼んでおこうか?

なんて、スタッフさんのことを心配していたら先輩に置いていかれてしまった。


「だ、大丈夫ですか?すぐに休憩して、水を飲んでくださいね!」


スタスタと速いスピードで歩く先輩に追いつくために、小走りになりながらも、会議室に着く前までには何とか追いつけた。











「ったく、しつこい…」

会議室から楽屋へと戻ってきた先輩は、楽屋においてある椅子に座ると、机に突っ伏してしまった。番前からかなり疲れているらしい。それもそのはず。

様々なスタッフの皆さんが先輩のメアドや電話番号を聞き出そうと、しつこく話しかけていた。所謂ナンパというヤツ。