天使のアリア––翼の記憶––

「ここからだと藍羅から送って行った方が近いね」

そして歩き、二つ目の角を曲がったその時。



「華原月子じゃねーか。」



前方に三人の黒いスーツとサングラスを身に纏った体格の良い輩がいた。

その瞬間、緊張が走る。

瞬時にデューク先輩が私と藍羅先輩を守るように一歩前に出て片手を広げた。

「…月子ちゃん、知り合い?」

コソッと耳打ちするようにデューク先輩から尋ねられ、「最近追いかけられるんです」と答えた。

こんなところでまた会うなんて…


「さっさと歌姫の居場所を答えろ」


一歩一歩ゆっくりと距離が縮まる。


「夢巫女さんよぉ」


男との距離、僅か1メートル。

どうしよう。このままじゃ先輩方まで巻き込んでしまう。

男はデューク先輩の目の前まで来て、睨みつけた。

「怪我したくねぇならそこをどけ。俺らはこいつに用があんだよ」

「何の用なのかな? なんだか知り合いでもないみたいだけど」

余裕たっぷりのデューク先輩からは微塵も焦りが感じられない。

「あぁ? てめぇ何様のつもりだ。どけ!」

「そう言われて、はいはいそーですか、なーんて言って俺がどくとでも思ってるのかな? そう思ってるなら相当頭が弱いね」

先輩はフッと鼻で笑った。

「てめっナメやがって!」

男の一人が殴りかかろうと拳を振り上げる。

「先輩!」

「二人ともちょっと離れてて」

こちらを向いて微笑んだかと思うと凄いスピードで蹴り飛ばした。

一撃、だった。

アスファルトと衣服の擦れる音がして、黒い物体は遠ざかって行く。

す、凄い…

そこから先輩の攻撃は止まらない。

次々と襲い掛かる男達を殴り飛ばしたり蹴り飛ばしたり、次々と攻撃を加えて行く。けれど、先輩に攻撃が当たることはない。

先輩、強い…

「こんな程度で俺に勝てると思わないでくれる?」

先輩は見下すように笑った。まるで別人のような顔だった。

「くそっ…!」