―---ジリジリジリジリ

「ふぇぇぇぇえええ!?」

目覚まし時計の大きな音で目が覚めれば、そこはいつもの私の部屋だった。

窓の外に目を凝らせば、太陽が街を照らし、朝の訪れを告げるように小鳥が鳴く、いつもの朝だった。

目覚まし時計のせいで荒れた呼吸を整える。いつも通りの世界だと状況を整理しつつ、深呼吸を繰り返し、心臓の鼓動を通常のペースに落ち着けていく。


あぁ、またあの夢だ。

何もない世界で私の名前を呼ぶ声が聞こえるというだけの夢。

ここ最近ずっと、この夢ばかり見ている。今日で一週間連続だ。こんなに長いこと同じ夢を見るなんて、相当重要な夢なんだと思う。

けれど、私が名前を呼ばれているだけという夢に、微塵も重要性を見出せない。

それに…私の名前を呼ぶあの声は、誰なの?

どこかで聞いたことがあるような気もするし、無いような気もする。

でも、確かに優しい声。

誰、だっけ…?

頭をフル回転させるけれど、見つからない。寝起きの頭には少々重労働だったらしい。

まぁ、大事なことならきっと今じゃなくても、いつか見つかるよね。

ふと時計に目をやると、体は固まった。

「いけない!」

急いで箪笥から体操服を引っ張り出した。けれど決して体育祭があるわけではない。

私の家には基本的に洋服がない。あるのは和服と学校の制服と体操服くらい。そのため和服よりも着るのが楽な体操服を重用しているのであります。

ささっと五分で着替えて急いでリビングへ向かった。


今日も長い1日が始まる。




「おはよう!」

リビングに駆け込めば、

「おはよう。」

白茶色の上品な着物に身を包んだおばあちゃんが穏やかにお茶を啜っていた。

「朝から走ってくるなんて、月子は今日も元気だねえ。」

おばあちゃんの美しい微笑みに私は苦笑した。

「好きで走ってるわけじゃないんだけどね。」

そうなのだ。何故かいつも移動するときに走ってばかりいるけれど、それは好きでそうしているわけではない。ただ物事に追われているだけなのだ。