一面白の世界にいるのは、私一人。


何もない空間に私一人取り残されたようにも感じてしまう。


周りを見渡しても誰もいない。

寒くもなければ温かくもない。

上もなければ下もない。


ここは、どこ?


すると不意に、


"……........…き…こ……"


声が聞こえた。空間に響いている。


誰?

周りを見渡しても一面黒い世界があるだけだ。何も見えない。何も分からない。


"………つ…きこ…"


ねぇ、貴方は誰なの?


"……月子…"


陽だまりのように優しく私を呼ぶ、貴方は、一体…


"……歌姫を……"


そこで一面白の世界に影がさす。

まるで白いシャツに付着した墨汁のように、黒い光が世界を包んでいく。

それは恐怖でもあった。闇が心を支配するように思われたためだ。

けれど黒く染まる世界に残された僅かな白は、まるで夜空に煌めく星のようにも感じられた。

その光はみるみる小さく細くなっていき、闇も深まる。

待って、私はまだ知りたいことがあるの。

けれど世界は黒い。まるで先ほどまでの白など知らないように。

夜の闇よりずっとずっと深い闇が、世界に広がった–––––––––––