「おらレズ〜!死ねよ!」



「いたっ…いっ…」



「河下ってさ〜マジで女子が好きなの?」



クラスの隅の方で、四年生のクラスメイト達に囲まれた小百合が居る。



お腹などを蹴られて、青痣が身体に目立っていた。



この頃は眼鏡をかけ、暗い雰囲気のツインテール。



今思い出すと、懐かしさと悲しさが、ごちゃごちゃに混ざる。



「ねぇ、小百合ちゃんってレズなんでしょ〜?百合、って言ってるもん!お兄ちゃんが教えてくれた」



イジメッ子の一人が、笑いながら、クラスメイト達に伝えるように大きな声で言う。



ギャハハハハ、と下品な笑い声が所々で起こった。



「…」



「なんとか言えよレズ!!」



「ぅ…!!」



ガキ大将にもう一度身体を蹴られ、その場にうずくまる。



(痛い…怖い…)



二つの思いが、いつも頭をよぎっていたのだ。



「っ…」



「うわ、こいつ泣いてんぜ!キッモ!」



クラスメイトの殆どが、小百合のその惨めな姿を嘲笑した。



キーンコーンカーンコーン…



授業が始まるチャイムが鳴って、クラスメイトは渋々と小百合から離れて席についた。



小百合はホッと安堵のため息をついて、一番 端の椅子に座った。



クラスメイト達は、イジメを担任にはバレないようにしていたのを、思い出す。



先生に怒られるのが、怖かったのだろう。



教師はイジメを見て見ぬ振りをして、イジメが発覚した場合も、のらりくらりと躱していた。



机の上は綺麗で滑らかな薄い肌色で、傷一つついていない。



小百合の肌色は、傷で汚れているというのに。



チャイムが鳴ると、外に遊びに出ていたクラスメイト達が帰ってくる。



その中には、紗波の姿もあった。