黒愛−kuroai−

 


目に涙を滲ませ一頻り笑ってから、スッと真顔を作り、由梨に教えてあげた。



「“頑張れ”って言葉はね、“自分で何とかしろ”って意味なんだよ。

あの先生にとって、由梨の友達作りはどうでもいい事。

受験生の担任で超忙しいのに、くだらねぇ相談してくんなって、絶対思ってた」




由梨の顔色が更に悪くなる。

食べずに手に持つお握りが、グニャリと潰れていた。



私に意見する由梨なんて嫌い。

容赦なく、傷つく言葉を浴びせる。

反抗心をへし折ってあげないとネ。




「由梨を助けてあげたのは私だよ。

私のグループに入れて、嬉しかったでしょう?

ダサ子のあんたが、可愛いグループに入れたのは、私のお陰。

普通は有り得ないから」




ひしゃげたお握りが、ポロリ床に転がった。


それを拾い、包みを開け、海苔を巻かずに由梨の口に押し付けた。




「ねぇ由梨、中3時代楽しかったよね…

一緒にお昼を食べて、受験勉強して…

綺麗な思い出のまま、仕舞っておきたいと思わない?


お願い…
私の好きな由梨でいて…

盾突く気なら…

あの時の綺麗な思い出、粉々に砕いてアゲル」