「由〜梨」
優しく声を掛け、冷たい手を握った。
「鈴奈さんのためなんだよ?
酷い男と鈴奈さんが別れられなくても、いいと言うの?」
「それは…困るけど…
もっと別の方法で…
例えば、先生に相談するとか…」
先生に相談…
優等生の意見に、可笑しくて笑い出した。
なぜ私が笑うのか、由梨は分かっていない。
「へぇー、先生に相談すれば、何でも解決すると思うんだ」
明るい調子でそう言ってから、急に声のトーンを落とした。
「由梨って…
学習能力ゼロ?」
薄ら笑う私を見る目は、怯えていた。
「中3のクラス替えで、由梨は何度も担任に相談していたよね。
“友達がいない”
“一人ぼっちで淋しい”
“友達の作り方教えて下さい”
知ってるよ。由梨が悩みを逐一相談する子だって。
で?結果はどう?
あの先生、悩んでる由梨に何かしてくれた?」
「…頑張れって…
頑張れば、友達ができるって…」
ブハッと吹き出し、大笑いした。
どうしよう、ツボに入った。
可笑しくて堪らない。
“頑張れ”
元担任の超テキトーなアドバイスに、お腹が痛くなるほど笑ってしまった。


