黒愛−kuroai−

 


知っているカラオケ店に入った。


大手チェーン店と違い、個人経営のこの店、

個室が10個しかなくボロイけど、安くて規則がユルイから、学生に人気がある。



規則がユルイとは、飲食物を持ち込めると言うこと。


一応“持ち込み禁止”の貼紙がされているが、一度も注意された事はない。



中学の友達が、彼氏とエッチしてもバレなかったと言うし、

個室の防犯カメラは、あって無いような物なのだ。




コンビニで買ったお握りとお茶を持ち、個室の古びたソファーにどっかと座った。



「由梨、食べなよ。私の奢り。
思ったより上手く演技してくれたご褒美ね」



由梨の手にお握りを捩込むが、食べようとしない。


私だけお腹を満たし終えた時、由梨が震える声で意見した。




「愛美ちゃん…やっぱり良くないよ…

鈴奈さんを貶(オトシ)めるみたいで…こんなの…」




貶める“みたい”と由梨は言う。

“みたい”は要らない。
貶めているのだから。