黒愛−kuroai−

 


清宮鈴奈と駅まで一緒に歩き、
別の電車に乗り別れた。


由梨を連れて家に帰る。


部屋に由梨を上げると、キョロキョロ見回し、
ピンクのカーテンに目を止めた。



中学時代、由梨を一度部屋に入れたことがある。

家具の配置は変わっていないが、このカーテンは当時なかった。




「大きなカーテンだね。
こんな所に窓なんてあった?」

そう言って、由梨はカーテンに手を伸ばす。



「開けるな!!」

大声で制すと、由梨はビクリと体を震わせた。




「あ…びっくりした?驚かせてごめんね?
あのね、そのカーテンの向こうには……」




壁一面に柊也先輩の写真。

それを見せるわけに行かないので、こんな説明をした。




「ある日突然、壁に変なシミが浮かんできたの…

人の顔型のシミ…
苦しげに何かを叫んでいる顔…」



由梨はカーテンに伸ばしかけていた手を、慌てて引っ込める。




「お父さんの知り合いに霊媒師がいてね、ピンクのカーテンで隠しなさいって言われたんだ」



「こ、怖いね…
カーテン一枚で大丈夫なの?」



「うん。今のところ、何も悪い事起きないから大丈夫じゃない?

由梨、そのカーテン絶対に開けないでね。
開けると…呪われるよ?」



「う、うん。
開けない。絶対開けない」