黒愛−kuroai−

 


彼女は吹奏楽部のフルート奏者。
毎日フルートを持ち帰り、家でも練習している。



私が購入したのは、彼女と同じフルートケースカバー。

フルート自体を買う必要はない。

傍目にフルートを持っていると見えれば、成功だから。




チャックを開け、中に新聞紙を詰め込み、形を整えた。



持って見るとやはり軽い。

でもちゃんとフルートが入っているように見えた。



そのカバーにもパンダ同様、汚れや傷を付けた。


ズームで写した写真を見て、どこにどんな傷があるのかをチェックしながら…




 ◇


作業は深夜まで続き、翌朝、寝不足気味で登校した。

授業中にぐっすり眠り、放課後には元気になる。



柊也先輩に

『今日もバイトでテニスの応援行けません』

と簡単なメールを送り、学校を出た。



向かった先は“聖心女学院”

正門前に立ち、私が待つのは由梨。