黒愛−kuroai−

 


バイトという嘘の理由に、柊也先輩は溜息をついた。

ホッとしたような、逆に何かに困っているような、
そんな気になる溜息だ。




「先輩?どうしたんですか?何か困っていますか?

あ…私、また先輩を困らせちゃいました?ごめんなさ…」



謝りかけた声に、彼が言葉を被せた。



「違うよ、困っているけど、愛美ちゃんのせいじゃない。

俺さ…すげーズルイこと考えてた…」




自嘲気味な笑い方…

ズルイとはどう言うことか?
彼の気持ちを掴めずにいた。




「聞かせて下さい。何を言われても、私は平気。

今困っている理由を知りたいです。ズルイって何がですか?」




先輩の手に自分の手を重ねた。

彼は振り払わず、しっかりと繋いでくれた。



それからポツポツと本心を話し始めた。




「正直な気持ちを言えば、呆れると思うけど…

俺さ…愛美ちゃんを振っておきながら、嫌われたくないと思ってる…

姿が見えないこの2週間、ずっと不安だった。

俺じゃない奴に心変わりしたんじゃないかと…イライラした。

彼女持ちってバラさなければ良かったと、後悔もした。


俺サイテー。
彼女は大事。けど、愛美ちゃんにもずっと好きでいてもらいたい」




そう言われて、「やっぱり」と思っていた。

柊也先輩の心は、私に傾いて来ている。



当たり前、彼が最終的に選ぶのは私。

それが運命だから。