私の左手には、透明な糸が巻き付けてあった。
その長さは3メートル。
釣り用の頑丈な糸は、さっきの釣り具屋で買った品。
糸の先には釣針も付いている。
釣り具屋のジジイに教わり、外れないよう、しっかり糸を結わえてある。
そして、その釣針は…
柊也先輩のジャケットの背中に、引っ掛けてあった。
一人で落ちる私を見て、彼は楽しそうに笑っていた。
しかし、狂喜する顔は、すぐに驚愕へと変化する。
ピンと張られた釣糸が、彼を奈落の底へと導いた。
強い力に引っ張られ、為す術なく、彼の体も宙に舞う。
私の左手に食い込んだ透明な糸は、皮膚を食い破り、
ヌラリと赤く、血に染まっていた。
“赤い糸”で結ばれた、私と柊也先輩…
なんて、ロマンチックなのだろう。