黒愛−kuroai−

 


悔し涙を流し、興奮する菜緒。

何とか宥めて落ち着かせようとする私。



お昼の教室はいつもより静かで、クラスメイト達はヒソヒソ話しながら、遠巻きにこっちを見ていた。



そこにタイミング悪く柊也先輩がやって来る。

今日は3日振りに、一緒にお昼を食べる約束をしていた。



「愛美」

と入口で名を呼ばれる。


先に反応したのは菜緒。
私より早く、柊也先輩に駆け寄った。




「柊也先輩!愛美が…」



涙目で真剣な顔した菜緒に詰め寄られ、彼は面食らっている。


余計な言葉を言われる前に、慌てて後ろから口を塞いだ。




今はダメ。

ここで暴露されては、準備している物が無駄になる。



柊也先輩は中傷ポスター以外のイジメに気付いていない。


酷いイジメを受けているとバラすのは、“今日の放課後”まで待って欲しい。




菜緒の耳元で

「お願い言わないで」

と小声で言い、


怪訝そうな彼の前で、取り繕うように笑った。