黒愛−kuroai−

 



 ◇


柊也先輩は一回戦を無事に勝ち抜き、
昼を挟んで2時間後に二回戦があるみたい。



私に出来ることは、カメラのシャッターを押すことだけ。


タオルを渡すのも、着ているジャージを預かるのも、何もかもあの子がやる。



あの子と彼がスコアブックを見ながら、真剣に話している。

それを木陰からジッと見ていた。



あの女…ジャマ……




 ◇


試合結果は二回戦敗退だった。

他の部員も敗退し、今年のテニス部は全国大会に進めなかった。



肩を落とす先輩に声を掛けられず、そのまま家に帰って来た。



試合結果は残念だけど、
真剣にコートを駆ける彼は最高に素敵だった。



見に行って良かったと思っていた。





夜寝る前に、今日写した何十枚もの画像をプリントした。


写真になった物を一枚一枚眺め、ニヤニヤする。



「この先輩いいなー…
こっちを見て、笑ってくれたやつ…」



今日のベストショットを大きく引き伸ばし、壁の中央にピンで留めた。



ピンクのカーテンで隠された壁は、

今では少しの余白もない程、写真が溢れている。