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柊也先輩は一回戦を無事に勝ち抜き、
昼を挟んで2時間後に二回戦があるみたい。
私に出来ることは、カメラのシャッターを押すことだけ。
タオルを渡すのも、着ているジャージを預かるのも、何もかもあの子がやる。
あの子と彼がスコアブックを見ながら、真剣に話している。
それを木陰からジッと見ていた。
あの女…ジャマ……
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試合結果は二回戦敗退だった。
他の部員も敗退し、今年のテニス部は全国大会に進めなかった。
肩を落とす先輩に声を掛けられず、そのまま家に帰って来た。
試合結果は残念だけど、
真剣にコートを駆ける彼は最高に素敵だった。
見に行って良かったと思っていた。
夜寝る前に、今日写した何十枚もの画像をプリントした。
写真になった物を一枚一枚眺め、ニヤニヤする。
「この先輩いいなー…
こっちを見て、笑ってくれたやつ…」
今日のベストショットを大きく引き伸ばし、壁の中央にピンで留めた。
ピンクのカーテンで隠された壁は、
今では少しの余白もない程、写真が溢れている。


