「さっきはありがとう。
ちょっとお邪魔してもいい?」
「え、あ……うん」
森永さんは雷牙の横、あたしの向いの席に腰を下ろす。
「ノート、すごくわかりやすかったよ。
おかげで当たったけど、なんとか乗り切れた」
「よ、よかった……」
「だからね、これあげる」
森永さんはポケットからギンガムチェックの小袋を取り出す。
あたしがなかなか受け取らないので、彼女はあたしの手をとり、そこに袋を押し付けた。
そっとそれを開けると、丸いケースのリップクリームが。
「い、いいよ、こんなのもらえない」
それはあたしでも知っている、有名なショップのものだった。
天然植物材料を使っているから、普通のリップクリームよりちょっと高いはず。
「いいよ、実は買い置きしてたの忘れて買っちゃって、余ってるんだ。
昨日うっかりしててさー、しかもそのままカバンに入ってたの」
森永さんは、可愛らしいお顔でにこりと笑う。
なんだか、同じ女の子なのに、胸がきゅーんとなった。



