この見た目だもんね、本当は英語がわかると誤解されても仕方ないかも……。
四郎くんは涙目の彼女に、淡々と言い放つ。
「だから、我はポルトガル語しかわからんと言っておろう。
英語の予習なら、こいつがやってあるはずだ」
「えっ!」
ぐいっと腕をひっぱられ、突然彼女の前に出されてしまった。
四郎くんに注がれていたみんなの視線が、あたしに集まる。
途端に恥ずかしくなってうつむいていると、四郎くんに話しかけた女子が、あたしをのぞきこんだ。
「ほんと?やってあるの?」
他の子だってやってあるんだろうけど、みんな四郎くんのノートが見たかったみたい。
興味をなくしたのか、ひとりまたひとりと、その場から離れていく。
「う……うん」
うなずくと、その女子……たしか、森永さんだ。
森永さんはぱっと顔を輝かせた。
「お願い!見せて!」
可愛くお願いされて、あたしはノートを彼女に差し出す。
森永さんは、お礼を言って、すぐにそれを自分のノートに書き写し始めた。



