「そういえば天草って、どことどこのハーフなんだっけ?」
そう聞いたのは槙原くんだ。
気になっていたけどなんとなく聞きづらかったことを、あっさり聞いてくれた!
あたしは四郎くんの後ろで、耳をすませる。
「父がポルトガルで、母が日本」
四郎くんは簡潔に答えた。
ウソをついているようには見えない。
もしやお父さんって、ザビエル?
時代がちょっと違うか……。
禁教令が出てからも、幕府とポルトガルとは貿易だけはしていたらしいから、そこで四郎くんのお父さんは、日本人のお母さんと知り合ったのかな……。
「っていうか、本当に予習終わらないんだけど!
どうしよう、今日当たるのに~!」
近くの席から、悲痛な叫び声が聞こえた。
長い髪をサイドでまとめた女子生徒は、くるりと四郎くんの方を見た。
「天草くん、お願い!
本当に困ってるの!」



