「な、なんだありゃ!」
四郎くんが教会の方をふりむくと同時に、雷牙が叫んだ。
そちらを見ると……。
瓦礫の山のところどころから、もやもやと煙のようなものが立ち上る。
さっきの幽霊と同じようなもの?
「どういうことだ」
風牙くんが独り言のように言う。
いつもは優しい目が、厳しく細められる。
「オロチの残った気に寄ってきたんだろう。
あいつは存在するだけで、悪霊や悪妖怪に力を与えてしまう」
四郎くんのロザリオが、また杖の形に変わる。
「オロチに仕えようとしているのか」
「たぶんな。探している途中なんだろう」
二人が話している間にも、煙のようなものはだんだんと実体に変わっていく。
その姿は、二足歩行になったタヌキのようだった。
普通のタヌキと違うのは、そのサイズだ。
彼らは、人間くらいの大きさをしていた。
不気味に光る獣の目が、きらりとこちらを射抜く。



