四郎くんが、口の中で何か呪文のようなものを呟く。
すると、崩れた教会から、またぱらぱらと瓦礫が落ちる音がした。
「……来い」
彼が言ったとたん、瓦礫の間から、金色の光が漏れる。
それは四郎くんの手から出る気より、もっともっと強い光。
幽霊はまぶしそうに眼を細めた。
あたしもその光に見入っていると……。
──ズボッ!
突然大きな音がして、何かが瓦礫の中から勢いよく飛び出した。
がらがらと、瓦礫が崩れて散らばる。
その上空に現れたのは……。
「十字架……?」
金色の、細身の十字架だった。
ちょうど、教会の屋根についていたような。
四郎くんの腰ほどの長さのあるそれは、一瞬姿を消す。
あれっと思っていると、次の瞬間には彼の手の中におさまっていた。
な、なにこれ!?
「……人間に危害を及ぼすな。
この体を手に入れたとて、お前の人生は元には戻らない」
十字架の杖をかざし、彼は幽霊の顔を照らす。



