白い着物を着て、だらりと垂らした黒い長髪が顔を隠す。
よく、夏のお化け屋敷とかで見る、幽霊みたいな感じだ。
「な、なにあれ……」
「……地縛霊か、妖怪か……とにかく、良いものではなさそうだな」
そんなぁ!
ぞくぞくと、悪寒が全身を駆け抜ける。
この幽霊さん、絶対ヤバい。
今まで会ったどんな幽霊や妖怪より(オロチは別として)、放つオーラみたいなものがどろどろしてて、飲み込まれちゃいそう。
お腹が空いたまま亡くなったとか、そんなレベルじゃないような気がする。
四郎君のかげでぶるぶる震えていると、その幽霊は、ゆっくりとこちらに焦点を合わせてくる。
半分髪の毛で隠れた顔を上げると、もう半分の目が現れた。
「……ぅ……っ!」
その目と視線があってしまった瞬間、恐怖で声が出なくなってしまった。
充血したように赤い白目の中に、灰色の瞳。
それは、強い恨みみたいなものをはらんでいた。



