「なにしてるんだ。お前も来い」
あーあ、ロープの前で知らん顔してたのに……。
やっぱり呼ばれちゃったよ。
あたしは仕方なく、ロープをくぐって中に入る。
そのとき。
「あっ、小さいおっさん!」
足元に、教会のカギを開けておいてくれたおっさん妖精を発見。
ちなみにおっさんは浅黒い肌にけっこういかついお顔で、緑のジャージを着ていた。
小さめのスマホくらいの背丈で、彼らがどこから来たのか、あたしは知らない。
「無事だったの?」
スカートからチョコレートを取り出すと、おっさんは警戒を解いて近づいてくる。
『昨日、とてもまがまがしいもの落ちてきた。
もうこの町は危険だから、わしら、引越しの準備している』
おっさんは素直に話しかけてくる。
まがまがしいものって、もしかしなくてもオロチのことだよね。
「町が危険なの?」
『あいつ、姿を消して逃げた。
どこにいるかはわからないけど、たぶんまだ生きてる。
傷を負っていたから、この近くにいるはず』



