「それで良い」
何様なの。
あたしは俺様にはついていけないよ。
もし男の子と一緒にいるとしたら、優しい人がいい。
人の気持ちがわかって、指図とか命令なんかしない人。
そう、たとえば槙原くんみたいな……。
「では、行こう」
ぼんやりしていたら、四郎くんはいつの間にか立ち上がり、あたしの手をつかんでいた。
そして、食器を返却口に返しもせず、すたすた歩きだしてしまう。
「あの、行くってどこへ?」
「お前と会った教会だ。
昨日あそこに、落し物をした」
「落し物?」
何か落ちたっけ?
あの怖い蛇の妖怪……オロチのせいで、よく覚えてないや。
「ってそれ、あたしも行かなきゃだめですか?
午後の授業が始まっちゃうんですけど」
「授業?」
「ここは学校で……集団で、教育を受けているんです」
「大きな寺子屋みたいなものか。
まあいい、そんなもの放棄してしまえ」



