あのときあたしは、神様に見放されたんだと思ってた。


なんてひどいことをするんだろうって。


でも、ここでこうして幸せになるのに、きっと必要な別れだったんだよね。


今ならわかるよ。


だけど……。



ごめんなさい。


あたしはやっぱり、神様を信じていません。


運命を作っていくのは、やっぱり人の手なのだと思うから。


あたしが信じるのは、この華奢で大きな手、ただひとつだけ。


これからも、あたしたち二人の手で、扉を開いていくんだ。


「ねえ、先生」


「……その呼び方、燃えるな」


「そうじゃなくて……ね、今の名前……教えて」


彼はブルーの瞳で笑うと、あたしの耳元で、新しい名前をそっとささやいた。


もう島原の乱の総大将、天草四郎はどこにもいない。


あたしは新しい名前のあなたと、これからもずっと。


この世を、精一杯生きていきます。



先生の名前をそっとささやく。


くすぐったくて、どちらともなく笑いが漏れた。


あたしたちの周りでは、祝福してくれる妖精たちの粉が、ステンドグラスから差す光の中で、キラキラと輝いていた。




【終】