「四郎様、お怪我を……!」
悲鳴のような声を出し、女たちが煙の中をむせながら、近寄ってくる。
「……案ずるでない。
悪魔との最後の戦いに、我は勝ったのだ。
いつかこの地にも、デウスの教えを自由に信じられる時代がやってくる」
我が一人でオロチと戦っていたことを知っていた女たちは、その言葉を簡単に信じた。
涙ぐみ、むせながら、「四郎様万歳」と笑って見せる。
誰も信じはしないだろうが……我は見てきたぞ。
不安定ながらも、まだ平和だった世の中と、本物の天使の存在を。
「遅くなって悪かったな。
我は結局、なんの力にもなれなかった……」
謝罪と親愛の意味を込め、ひとりずつ、力の限り抱きしめる。
「我は誰も救えなかった。
せめてもの償いに、天国(パライゾ)への扉をお前たちに示そう……」
せめて最後に、幸せな幻を見せてやろうと、胸のあたりを押さえる。
しかし、その手は空を切るばかり。
「ああ……」
そうだ。あのロザリオは、美心にやったんだった。