美心たちの姿が見えなくなった途端、ぐらりと体が傾き、ひざをつく。


「がはっ、はぁっ、ぁあ……」


喉からせりあがってくるものを吐き出す。


痛いという感覚よりも、脱力感が全身を襲った。


少しでも気を抜けば、このまま倒れこんでしまいそうだ。


しかし、なんとか膝に力を込め、立ち上がる。


階段へと向かい、足を進めると、微かに聞こえていた歌声が、はっきりと聞こえてきた。


崩れ落ちないように、ゆっくりと階段を下りていく。


すると。


「四郎様……!」


歌声が途絶える。


声がした方を見れば、数人のキリシタンが寄り添いあいながら、こちらを見ていた。


最後までそばにいてくれた、身の回りの世話をしてくれた女たちだ。


総攻撃の日、幕府軍は三の丸、二の丸を先に落とした。


城に残っていたほとんどの者は、そこで戦って命を落としたはずだ。


この本丸に、まだ人が残っていたとは……。