昔むかし……。
元は山の神様だったヤマタノオロチは、ある老夫婦の7人の娘をひとりずつ襲い、食べてしまっていた。
残された最後の娘も、今度オロチが来たときは食べられてしまうだろうと夫婦は嘆いていた。
そこへスサノオさんが登場。
その娘との結婚を条件に、ヤマタノオロチを倒したらしい。
「ああ……我の時代にオロチは現れ、島原の領主に乗り移っていた」
天草さんは腕を組み、渋い顔をしていた。
って……えええ!?
その妖怪(もとは神様みたいだけど怖いから妖怪って言おう)、人に乗り移るのー?
「ひどい世界だった。
オロチの力のせいで海は荒れ、凶作が続いていた」
しんと部屋が静まり返る。
その中で、天草さんの低い声だけが響いた。
「そのうえでオロチは、天草や島原の農民たちから、年貢といっては作物をすべて奪っていった。
それを納められない者には容赦ない拷問が加えられた。
妊婦を水の中に作った牢の中に入れて殺したり……やつはそうやって、人間が苦しむ様を楽しんでいた」
少し聞いただけで、すさまじい時代だったんだろうと想像がついた。
スサノオ兄弟の表情も硬くなる。
まさか、妖怪のせいで世の中が荒れていたなんて……。



