天草さんは風牙くんの目を探るように見つめた。
やがて、彼に敵意がないことを悟ったのか、低い声でぼそりとつぶやく。
「敵の名は……八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」
その名を聞いた途端、今まで大人しく座っていた雷牙が、突然立ち上がった。
「ええっ!?マジかよ!!」
「ど、どうしたの雷牙」
天草さんも驚いた顔してるよ。
「どうもこうも、八岐大蛇って言えば、俺らのご先祖様の宿敵じゃねえか!」
ご先祖様って、スサノオさん?
「どういうことだ?」
取り乱す雷牙を無視し、天草さんは風牙くんに聞く。
「俺たちは神代に八岐大蛇と戦った神、スサノオノミコトの血を引く者だ。
やつがスサノオに滅ぼされた後も、完全に消滅せずに生き延びたという説がある。
まさかそれが、あんたの時代によみがえっていたとは……」
ちょっと待って、もう完全についていけない。
あたしはこそこそと、八岐大蛇をスマホで検索する。
なんか難しくてよくわかんない……。
とにかく、頭と尾がそれぞれ8つもついてる化け物らしい。



