『……なぜだ』
ゆらりと、その鎌首をもたげる。
『なぜ、おとなしくわしの花嫁にならんのだ。
さすれば、命は助けてやろうというものを……』
その声には、少しの悲しみが宿っているようだった。
『なぜお前たちは、わしを拒絶するのだ!』
オロチの言葉にならない絶叫が、天を、地を、揺らめかせた。
見えない音の波に揺られ、他に何も聞こえなくなったとき……。
オロチの巨大な頭が、天から落下してきたのが見えた。
あたしはそのまま、目を閉じる。
風圧のようなものが頬をなで、首筋に生臭い息を感じた。
そのまま牙を突き立てられるのだと思った、刹那。
「美心ぉぉぉぉぉぉっ!!」
四郎くんの声が聞こえ、涙が一粒こぼれる。
そうして愛しいひとの声を聞きながら、自分の意識が遠くなっていくのを感じた。



