『なぜわしの邪魔をする……』
ひとつの首が、あたしたちに問いかける。
「あなたが、人間を苦しめようとするからだよ」
そのせいで隠れキリシタンがどれだけ苦しんだか。
四郎くんがどれだけ傷ついたか。
彼らが虐げられたことは、絶対に許せない。
『人間など、少し減った方が世のためになるではないか。
増えれば増えるほど、やつらは人間同士で争い、憎みあうだけではないか』
「そんなこと……」
『お前たちがわしを滅ぼそうという理由も、単に報復なのだろう?
他の人間を傷つけられたから、わしを滅ぼす。
ではわしの憤りは、どこへぶつけるべきだったというのだ!』
直接頭で響くオロチの怒号に、思わず耳をふさぎたくなる。
けれどそんな暇はなく、残った頭が、あたしの目の前に伸びてきた。
「美心!」
その牙に噛み砕かれる前に、四郎くんがあたしを突き飛ばす。
その間にも、別の頭が彼の背後に迫っていた。



