苦しむオロチの胴につぶされそうになり、慌てて後ろに走る。
床の木の板の間から、黒い煙が糸のように上がってきているのが見えた。
そうだ、このお城は立てこもる一揆軍を倒すため、火が放たれている。
この床も、いつ焼け落ちてしまうかわからない。
彼等は早急に決着をつけるため、相当無理をしてるんだ。
「はぁ、はぁ、あと5つ……」
肩で息をする雷牙の頭の上に何かが飛んでいくのが見えた。
あたしの頭をこえて振り下ろされるのは……。
「雷牙っ、上!」
オロチの尻尾だ!
気づいたときには、もう雷牙は後ろに飛び退いていた。
「雷牙!」
風牙くんの叫び声が聞こえると同時、あたしは走り出していた。
雷牙の横から、まだ生きているオロチの頭が近づくのが見えたから。
オロチは灰色の目を怒りで赤く染める。
その口が開くと、並んだ牙の奥に、太陽のような燃える赤い光が見えた。
ハッと気づいた雷牙がそちらを向いた時には遅く……。
光が、彼に向かって吐き出される。
「マジかよ……っ!」
それは紛れもない、炎だった。
あたしは走る。
夢中で、雷牙の前に出る。
両手を突き出して、叫んだ。



