目の前に、オロチの毒霧が噴射される。


四郎くんの杖で守ってもらいながら、あたしは説得を繰り返す。


「ひとりでムリしないで。

あたしも、風牙くんも雷牙もいる。

頼っていいんだよ。

ひとりで全部背負ったりしなくて、いいんだよ」
 

四郎くんは今まで、一人でがんばり過ぎたんだよ。


つらくても、怖くても誰にも言わず、自信満々に笑うしかなかったんだよね。


もう、そんなことしなくていいんだよ。


まっすぐ見つめれば、四郎くんはブルーの瞳を少し丸くする。


そして……本当に一瞬だけど、泣きそうな顔をした。


「気は、生命力そのものだ。

力を使い過ぎれば、お前の命も危ない。

それは、わかってるんだな」


真剣な顔で、四郎くんはあたしに問う。


こくりとうなずくと、彼は光る杖で、毒霧を押しやった。


そしてぎゅっとあたしの腰を抱き寄せる。


どきりとするまもなく額にキスをして、彼は甘い響きを持った低い声で、あたしに囁く。


「この世でお前だけは……信じているからな」


痛いくらい抱きしめると、すぐに離される。
 

そうして彼は敵に向かい、髪をなびかせて疾走していった。