風牙くんは、指で年表をなぞりながら、ゆっくりと説明する。
「島原の乱のあと数百年経ってから、江戸幕府は崩壊した。
日本は開国し、新しい時代に入った」
天草さんは信じられないというような表情だけど、一応黙って聞いている。
「それから他国との戦争が幾度かあったけど……今はここ。
一応平和な、平成の世だ」
「……ということは、お前たちは未来の人間ということか?」
「あんたたちからしたらな」
風牙くんの簡単な説明を聞き終えて、天草さんはうーんとうなった。
「信じがたい……」
そりゃあそうでしょうね……。
「我は、原城で宿敵と一騎打ちをしている最中だったはずだ」
「原城?」
「一揆軍が最後に立てこもった城の名だ。
とにかく、その一騎打ちの最中に、突然床が抜けたように感じたのは覚えている。
まるで奈落の底に吸い込まれるように、我は落ちて……」
そこまで言うと、天草さんはこちらをじっと見た。
「着地点に、お前がいた」
イケメンさんに見つめられて、頬が熱くなる。
それと同時に、とてもいたたまれない気持ちになった。



