「美心……」


四郎くんが、優しく髪をなでてくれる。


それでも、不安な気持ちは消えない。


『……愚かな……』


オロチの声が聞こえ、四郎くんの手が止まる。


『違う世界の者どうしが、結ばれるはずなどないものを……』


8つの首が、それぞれ笑っているようにゴロゴロと鳴る。


「自分が誰にも惚れられないからといって、意地悪を言うものではない」


四郎くんが返すと、オロチの笑い声が一瞬固まった。


「美心、あいつとの決着は必ずつける。

必ず勝ってみせるから、お前は逃げろ」


「やだ」


「あしでまといだ」


「自分のことは、自分で守るから!」


もう何度目かになるかわからない、同じようなやりとりの後、四郎くんはため息をついた。


「お前のその頑固なところは、なんとかならんのか」


「あなただけに言われたくない!」


「せっかく可愛いのに」


「へっ」


思わず顔を熱くしてしまうと、後ろの方から声が聞こえてきた。