自分の意志とは無関係に、身体が食べ物を欲しがる。


手がベタベタになって、チョコレートが全てなくなった。


そのタイミングで雷牙に渡されたミルクティーのペットボトルを一気飲みすると……。


『あぁ……腹いっぱいじゃぁ……』


しわがれているけど、なんだかすごく満足したような声が聞こえた。


すると、背中がふっと軽くなる。


後ろを振り返ると、白装束のおじいちゃんが、キラキラ光る階段を上って行くのが見えた。


『ありがとうよぉぉ~……』


おじいちゃんはお礼を言いながら、雲がかかる空の上へと上っていった。


「うん、今日はたったの1300kcalで済んだな。
お疲れさん!」


オレンジの髪をした、雷牙が笑う。

耳のピアスが揺れ動いた。


「たったじゃないよ……1300って、結構なカロリーだよ!」


あたしは疲れきったあごをさする。


「あ、チョコレートが」


風牙くんに指摘された時にはもう遅い。

手がベタベタだったのを忘れていたあたしは、頬からあごにベッタリとチョコレートを塗りたくってしまった。


「あ、あう~!」


なんてこと。
早く洗わなきゃ。


と思っていたら、風牙くんの手が、あたしの手首をとらえた。