まさか。ただの冗談に決まってる。
あたしは2階に駆け上がり、四郎くんの部屋のドアノブに、手をかけた。
「四郎くん!」
思い切り力を入れ、ドアを開ける。
「そんな……」
ベッドも、そのほかのものも、お兄ちゃんが引っ越していったままになっている部屋。
四郎くんの姿は、どこにもない。
ふらりとクローゼットに近づき、その扉を開ける。
そこには、お兄ちゃんの制服が元のサイズに戻って、きちんとかけられていた。
そして……。
「どうして……?」
四郎くんが江戸時代から着てきたはずの白装束と陣羽織が、どこにもなかった。
ただ、ザビエルみたいだと思ったマヌケなつけエリが、すみにぽとりと落ちていた。
嫌な予感が、全身を駆け巡る。
あたしはすぐに制服に着替え、スサノオ兄弟に連絡した。
四郎くん。
四郎くん。
どこに行ってしまったの?