「お母さん……四郎くんは?」


「えっ?」


「四郎くん、まだ起きてないの?」


もしかして、あのあと自分の部屋に戻って寝たのかな?


寝坊してるのかもと思って、お母さんの返事も聞かずに階段へ向かった、そのとき。


「四郎くんって?」


お母さんが、逆にあたしに聞いてきた。


「四郎くんって、だれ?」


誰って……。


「なに言ってるの、お母さん若年性アルツハイマー?

四郎くんって言えば、天草四郎くんじゃない」


「天草四郎?島原の乱の?
またお兄ちゃんの古いゲームでもしたの?」


「そうじゃなくて、背が高くて、目が青い、イケメンの四郎くんだよ!」


悪ふざけだとしか思えなくて、怒鳴るように言ってしまう。


それでもお母さんは、とぼけたように首をかしげる。


「……夢でも見てるんじゃないの?」


そんな。


まさか、本当に覚えてないの?


四郎くんの催眠が、解けてしまったの?