くれ、なんて言わなくたって。


あなたはいつの間にか、勝手に奪っていったでしょ?


聖なる儀式とは程遠い、ただの人どうしのキスで、奪い尽くすんでしょ?


いつの間にか、涙が目じりからこぼれて、耳へと流れていった。


あなたが安心できる居場所になれるのなら、あたしは何でもするよ。


理想通りの自分になれるように、もっとがんばるから。


だからずっと、そばにいてね。




「ねえ、四郎くん。
神様は、いるのかもしれないね」



あのお星さまの上で、見ているのかもしれない。


だって、あたしたちが出会えたのは……奇跡でしかないでしょう?


白い頬を包むと、四郎くんはあいまいに笑った。


否定も肯定もせず、そっと静かに笑っていた。