天草さんの顔色が、だんだんとよくなっていく。
声も出なくなって、落ち着いた寝息に変わった。
『楽になったみたい……』
ホッとすると、彼が本当に整った顔であることを再認識した。
まぶたを閉じていてもイケメンってすごい。
『はい、じゃあ持って帰ってくれるかな』
『えっ』
紙井湯先生が笑顔で言った言葉に、耳を疑う。
『ただで縫ってあげたんだから、この点滴が終わったら、持って帰ってね。
うちは入院設備はないから』
紙井湯先生は念を押す。
どうやら、冗談じゃないみたい……。
ひどい。
この先生モグリみたいだし、優しそうに見えて、色々ひどい。
『しょうがねぇなー。
ひとまず、俺らんちに泊めてやるか?』
雷牙が風牙くんに聞く。
『それはかまわないが……また妖怪に憑かれると厄介だな』
『そうだね。
僕としては、妖怪の気を消すことができた彼女の家をおすすめするけど』
『ええっ!?』
先生……自分はあっさり追い出そうとしてるのに、あたしに押しつけようとするなんて!
鬼や……あんたは鬼や!



