窓の外は、先ほどのことなど何もなかったかのように、静かな夜空が広がっていた。


美心の寝息を聞きながら、そのベッドにもたれる。


オロチと対峙して多大な力を使い、疲れたのだろう。


呪いをかけられたりはしなかったようだが、彼女はあれから眠り続けている。


母親が着替えさせても、我が寝床まで運んでも、目を覚ますことはなかった。


きっと、よく休めばそのうち目覚めるだろう。


オロチが去ったあと、我とスサノオ兄弟で、奴が残していった妖怪を始末した。


決着が着いたころ、倒れていた人々はそれぞれ、意識を取り戻した。


雷牙が「明日のトップニュースになるな」と、よくわからないことを言っていたのを思い出す。


「……なんでだろうな……」


静かすぎる部屋の中で、自分の声がやけに低く聞こえた。


「なあ、美心よ。
どうして抵抗しなかった」


彼女が聞いていないのを確信しつつ、問いかける。


なぜ、美心は泣きそうな顔をしていたのだろう。


まるで、我と離れるのが寂しいと言うように。


潤んだ瞳に吸い込まれるように、気づけばこの腕に彼女を閉じ込めていた。


力をわけてやったときの戯れの口づけと今日のそれは、全く違う味がした気がした。


やけに赤い飴の甘い香りと、その唇の柔らかさが、今もまとわりついていて……離れない。


「一番の罪人は我か……」


目を閉じる。

美心の寝息と、自分の呼吸の拍子を合わせてみる。


すると、懐かしい景色がまぶたの裏に広がった。