ぱあん。
何かがはじけるような音が聞こえた。
遠のいていく意識の中、何もない空間の向こうにオロチがいたのが見えた。
『なんと、本当にわしの気を浄化しおった……その力、ぜひ欲しい』
体の力が抜けていく。
立っていられなくて、しりもちをつきそうになった。
その瞬間、がしりと後ろから誰かが支えてくれた。
「四郎くん……?」
「オロチ、その牙をしまうがいい。
彼女をこれ以上ムリさせれば、浄化能力が暴走しかねんぞ」
後ろから聞こえたのは、たしかに四郎くんの声だった。
『さすればわしの命が危ないと?戯けたことを』
興が冷めたように、オロチは首をぶるりと振った。
『いいだろう。今宵は退いてやる。
その娘は必ずわしがもらい受けるからな。
今の内にせいぜいあがくがいい』
そう言うと、オロチはぶわりと空へ舞い上がり、龍のように風に乗って去っていく。
「待て!!」
四郎くんは叫ぶけど、腕の中のあたしを放り出すことはなかった。
オロチが置いていった敵と仲間が戦う音を聞きながら、あたしは意識を手放した。