『やっぱり……妖怪にやられたんだな。
傷口の周りに、妙な気がくっついてる』
天草さんは、上半身裸のまま、寝かされていた。
背の割に痩せている体は、うっすらと筋肉をつけているだけで、余分なお肉がない。
うらやましい……なんて言ってる場合じゃなくて。
風牙くんの言葉が本当か、天草さんの傷口をよーく見てみる。
すると、たしかに傷口の上を、黒くて小さなミミズみたいなものが這っているのが見えた。
これが妖怪の気なんだ、たぶん。
『これのせいで苦しんでるの?』
『たぶんね』
『どーするよ、兄貴……こいつこのままじゃ危ないかもよ』
雷牙が腕を組んでうなる。
天草さんはあぁともうぅともつかないうめき声を時々あげては、苦しそうにしていた。
可哀想……。
周りでは、治癒の力を持ったカッパを探して来ようとか、ファンタジーな会話が繰り広げられている。
それより、この黒いミミズをとっちゃえば早いんじゃない?
あたしはみんなが議論している間に、そっと傷口に指を伸ばした。
でもこれ、まるで影みたいだけど、指でつかめるのかな?



