『またキミですか……妖怪の手当てはもうお断りしますよ。
儲けになりゃしない』


よ、妖怪の手当て?

雷牙もさらっと『妖怪がらみの』って言ったし……


もしかしてこのお医者さんも、イタい人?


緑がかった髪にとがった大きめのメガネをしたそのお医者さんは、まだ20代に見えた。


『先生、正体は不明ですが、とにかく助けてやってもらえませんか。

何かするどいもので裂かれたような傷で……』


天草さんを背負っていた風牙くんが頭を下げる。


『しょうがないですね。
人みたいですし……できることはしましょうか』


お医者さんは大野兄弟に天草さんを運ばせ、手術室とプレートがかかった部屋に入っていった。


あたしたちは、居間の茶舞台を囲んで、手術が終わるのを待つ。


そこで、風牙くんが説明をはじめる。


『紙井湯先生は、俺たちと同じ【見える人】なんだ。

だからこのあたりの妖怪が頼ってくる』


『妖怪って……』


『美心だって見えるだろ?

妖怪も怪我や病気すると医者に行きたくなるみたいだぜ?』


うそーん。
そうなの?


『っていうか、なんで2人はそんなに妖怪事情に詳しいの?』