四郎くんは困り果てたようで、回されたボールをすぐに他の味方にパスをするという方法で、その場を乗り切っていた。
ウドの大木……その言葉がこんなに似合う人を、初めて見たよ四郎くん。
「天草くん……ポルトガルにはバスケなかったのかな?」
奈々ちゃんのボケが面白くて、思わず吹き出す。
「ルールを覚えれば、活躍できそうなのにね」
「うん、そうだね」
四郎くんは「我に毬をまわすでない!」と叫びながらあたふたしている。
きっと練習さえすれば、みんながみとれるくらいかっこいいプレーができるのにね。
「……美心さあ、ほんとに天草くんとは何もないわけ?」
「へっ?」
突然の奈々ちゃんのセリフに、思わずマヌケな声で返してしまう。
奈々ちゃんは微笑みながら、あたしだけに聞こえるくらいの声で、優しく言った。
「だってさっきから、天草くんのほうばっかり見てるもん」
は……?
「そ、そんなことないもん。見てないもん」
慌てて言うと、奈々ちゃんはくすくすと笑う。



