「……どうしよう。
あたし、ひどいことしちゃった」
廊下で立ち止まると、目立つ二人のせいで注目される。
だけどそんなこともおかまいなしに、ぽたりぽたりと涙が頬を伝って、床に落ちた。
「美心……」
「あ、あたしなんかが……せ、せっかく、好きになっ、てくれた、のに……」
胸が痛い。
あたしはバカだ。
自分で断っておいて、人の期待や好意を裏切ってしまったことが、自分が受け入れられないことよりもっと、悲しいなんて。
「……しょうがねえよ。
周り見てみろ。
くっついたり離れたりなんか、日常茶飯事だろ。
そんなことで人は死んだりしねえよ」
雷牙が困った顔で、あたしの頭をなでてくれる。
「……その通りだな。
お前はお人よしすぎる。
傷つけられたり、傷つけたりを繰り返して、人は強くなっていくんだ。
大丈夫。お前も坊やも、今この瞬間の悲しみだけがすべてじゃない」
……なんか、四郎くんが言うと説得力あるなあ。



