「大丈夫だよ。
気にしないで、今まで通りにして」
目の前の彼は、苦笑しながらあたしの肩をたたく。
「うん。ほんとにありがとう」
ひとつおじぎをすると、槙原くんの手があたしの肩から離れる。
あたしは顔を上げると同時に彼に背を向け、先に階段を下りていった。
背後からの足音が聞こえる前に、急いで、転げ落ちる勢いで、階段を駆け下りる。
すると、次の踊り場で、オロチを警戒して待っていた四郎くんと雷牙に体当たりしてしまった。
「……おつかれさん」
雷牙があたしの体勢を立て直し、教室へと促す。
「あれで、良かったのか?」
四郎くんが不思議そうにたずねる。
その青い瞳と目があうと、胸がちくりと痛んだ。
「うん……」
「好きじゃなかったのか」
「よくわかんない。けど、違うと思ったの」
二人の顔を見たら、何故か涙があふれだす。
泣きたいのはきっと、槙原くんのほうなのに。



