可愛いと言われた雷牙は、頬をピンクに染めていた。
「結局、今のところはそれ以上何もわからないということか」
風牙くんはそんな弟を見ながら、ため息をつく。
すると四郎くんが真面目な顔で言いだした。
「いや、オロチは確実に動き出している。
今日、我は学校でオロチに憑かれた学生を見た」
「えっ!?」
うっとりしていた雷牙が驚く。
「美心のクラスの、メガネの坊やだ。
一瞬だったが、たしかにあやつからオロチの気配がした」
「メガネ……というと、鬼に襲われたとき、一緒にいたやつだよな。
本当なのか」
「ああ。
ただ、本当に一瞬のことだった。
我が現れても追って来なかったし、まだ本調子じゃないのかもしれんな」
「傷が癒えていないということか?」
風牙くんの言葉に、四郎くんはふるりと首をふった。
「いや。
相性の良さそうな人間にとりつき、人間社会に紛れて悪さをするのがあいつのやり方だ。
とりつく人間を探して、転々としている途中かもしれない」



