「美心、帰るか……って、来てたのか」


教室の入り口付近が、にわかに色めき立つ。


そっちを向くと、風牙くんが教室をのぞきこんでいた。


彼と入れ違いになるように、槙原くんは教室の外へ出ていく。


「……あんた、この前の……」


風牙くんは槙原くんに気づき、声をかける。


だけど槙原くんは軽く会釈しただけで、すっとその場から立ち去ってしまった。


四郎くんはあえて彼のことには触れず、風牙くんを手招きする。


「ちょうど良かった。

色男よ、今から全員で紙井湯診療所へ向かおうと思う。

お前も竹刀遊びは休んで、一緒に来るがいい」


「色男……とは、俺のことか?

部活はもともと、今日はないが」


おお、風牙くんはさすがに大人だ……。


突然の俺様発言と嫌味を受け流してる。