「他人だなんて、寂しいこと言うなよ」
誰もいなくなった教室で、雷牙があたしの肩に手を置く。
「幼なじみのピンチを救うのは、男として当然だよ。
重荷に感じられると、ちょっとショックだ」
「そんな、重荷だなんて」
「美心は兄貴にとっても俺にとっても、大事な人間なんだよ。
だから、無茶しないでくれよな」
雷牙は肩に置いた手をぽんぽんとバウンドさせると、先に歩き出す。
あたしも重い書道用具を持って、彼の後を追った。
「雷牙……っ」
「ん?」
彼が振り向くと、耳のピアスが揺れる。
「あ、ありがとう!
あたしの力がいるときは、言ってね!」
二人には迷惑をかけっぱなしなのに……大事だなんて言ってくれて、嬉しい。
思わず微笑んでしまうと、雷牙も笑ってうなずいてくれた。
「……おう」
その頬が少しピンクに染まって見えたのは……気のせい?
ちょっと照れくさかったのかな……。