四郎くんは至近距離で、にやりと笑う。


「残念だが、我はデウスなど信じておらん」


「えっ」


デウスって、神様のことだよね?


天草四郎が神様を信じてないの?


日本の神様だけじゃなくて、自分たちの神様まで?


それってどうなのー!


「な、なんで……」


「なんでって……見たことないから。」


けろりとした顔で言う四郎くん。


「それだけっ?」


そういえば、風牙くんが言ってたっけ。


人間は、目に見えないものは信じられないって。


「そんな話はいいではないか。
せっかく与えられた余生を楽しく生きさせてくれ」


「ちょ、やだー!
いんちきキリシタンめーーーっ!」


必死で抵抗して彼から離れ、スリッパで頭を思い切りたたいてやった。


ぱっこーんと、良い音がした。


「ははっ、そんなに元気があるなら大丈夫だな。

坊やの前でも、そうやって、自然にしておったらいいのだ」


四郎くんは意外にも怒らず、あたしからスリッパを取り上げると、足元へと放り出す。