「お、お願いだから、出てきてよーっ!」
方法なんかわからないけど、あたしはいったん奈々ちゃんの体から手を離し……。
──ぱちーん!
彼女の頬を、思い切り平手打ちした。
するとその勢いにのってか、ぽこりと奈々ちゃんの頭から、黒いものが飛び出す。
「神崎さん!」
力が抜けてあたしにのしかかってきた奈々ちゃんの体を、駆け寄ってきた槙原くんが支える。
あたしはなんとか自分で立ち上がると、飛び出した黒いもののほうを振り返った。
「……鬼……?」
黒い影だったそれは、だんだんと本来の姿に返っていく。
赤黒い肌に、くぼんだ目の中の赤い瞳。
その頭部には、とがった角のようなものが現れた。
人の形をしているけれど、四郎くんより大きな背丈のそれは、ぬっと立ち上がり、あたしたちを見下ろした。
「う、あ……」
とんでもない威圧感をもったそれににらまれると、恐怖で声も出なくなってしまった。



